2018年度の「土用の丑の日」が近くなりました。
身近な行事ですが、名前の意味や由来を知る人は少ないものです。
そして、この日には決まってうなぎを食べますが、なぜ土用の丑の日にうなぎを食べるのか、その理由がとても気になりますよね。
そこで、この記事では、土用の丑の日の由来やうなぎを食べる理由について1つずつ確認して行きましょう。
目次
土用の丑の日の由来とは?うなぎを食べる理由は何?
今年2018年の土用の丑の日は7月20日(金)、8月1日(水)です。
土用の丑の日には決まってうなぎを食べる方も多いでしょう。
うなぎ好きの方には食事の時間が楽しみな日でもありますよね。
でも、そもそも土用の丑の日とはどんな日なのか、そしてなぜこの日にうなぎを食べるのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
その素朴な疑問に答えるべく、土用の丑の日の由来やウナギを食べる理由について今回はご紹介して行きますね。
まずは「土用の丑の日」の意味について確認してみましょう。
<土用の丑の日とは?>
土用の丑の日、という言葉を聞いて、まず疑問に思うのが「土用」と「丑の日」という2つの単語です。
普段何気なく使っている言葉ですが、どんな意味があるのかと聞かれると、なかなか答えることができないものですよね。
そこで、まずはこの2つの言葉の意味を探ってまいりましょう。
・「土用」の意味は?
「土用」というのは、立春・立夏・立秋・立冬に至るまでの18日間の期間のことを意味しています。
たとえば、2017年は8月7日が立秋なので、この日の前18日間を「土用」と呼んでいます。
具体的な日にちで表すと、「7月19日から8月6日まで」が「土用」に当たります。
春夏秋冬を通し、年に4回「土用」の期間があるので、「土用の丑の日」は夏のみではありません。
実際に2017年の場合を見てみると、「土用の丑の日」と呼べる日は1月26日、4月20日、5月2日、7月25日、8月6日、10月29日の計6回となっているのです。
そして、この「土用」という概念は、古代中国の「五行説」に由来しています。
五行説では「万物は木・火・土・金・水の5つの元素から成り立っている」という思想が唱えられています。
そして、この5元素はそれぞれの季節にも当てはめられています。
具体的には、春が木、夏は火、秋は金、冬は水というように対応しています。
ただし、季節は4つしかないので5元素のうちの「土」が余ってしまいますよね。
そこで、この余った「土」を季節の変わり目の立春・立夏・立秋・立冬に至るまでの18日間に当てはめ、「土用」と定めているのです。
「五行説」については「七夕の短冊はなぜ5色なのでしょうか?意味は陰陽五行説が関係!」の記事で詳しくご紹介しているので、興味のある方はそちらをご参照くださいね。
・「丑の日」の意味とは?
一方で、「丑の日」は何を意味するのでしょうか。
「丑」(うし)とは私たちが良く知る十二支の一つのことです。
十二支と言えば干支を思い浮かべますが、年だけでなく、日にちにも十二支を当てはめることができます。
十二支はその名の通り12日で一巡するので、丑の日は12日おきに巡ることになります。
つまり、「土用の丑の日」とは「土用」と呼ばれる期間に含まれる「丑の日」のことを指しているのです。
その年のタイミングによっては、「土用」と呼ばれる18日間に2回丑の日を迎える年も存在します。
実際2016年は1回でしたが、今年2017年は「土用」に期間中に丑の日を2回迎えます。
大体2年に1回の頻度で2回「土用の丑の日」を迎えるのです。
<なぜ土用の丑の日にウナギを食べるの?>
土用の丑の日にはウナギを食べますが、なぜこのような習慣がついたのか不思議に思いませんか。
その由来は諸説ありますが、最も有名なのは平賀源内にまつわる説です。
平賀源内とは江戸時代中期に実在した人物で、蘭学者・本草学者・静電気発生機(エレキテル)の発明家であり、日本のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼べる万能な学者です。
そして彼にまつわる言い伝えについて、次のようなものが残っています。
ある夏の日、うなぎ屋はうなぎが思うように売れず、困り果てていました。
というのも、天然のうなぎは初冬が旬であり、夏には売れずに残ってしまっていたからです。
そこで、うなぎ屋は平賀源内に悩みを打ち明けたところ、源内は宣伝の貼り紙を店の表に貼るように提案しました。
そして源内が「本日土用の丑の日、うなぎの日」という貼り紙を貼ったところ、うなぎは大変な人気を博したそうです。
もともと丑の日に「う」の付く食べ物を摂取すると、健康に恵まれることが信じられていた背景があったため、うなぎが江戸っ子の人気を勝ち得たのです。
ちなみに今現在においても、うなぎ以外で「う」の付くものであれば良いとする習慣が残っており、地域によっては「馬(馬肉)」や梅干し、うどんが食べられています。
また、多くの江戸っ子は「博学な平賀源内がうなぎを宣伝するのだから、健康にも良い影響があるのだろう」と思い、知り合いや友達に土用の丑の日にうなぎ屋に行くと良いと知らせたため、瞬く間に口コミが広がったとも考えられています。
このような背景があり、それ以来、このうなぎ屋だけでなく、他のうなぎ屋も土用の丑の日にうなぎを宣伝するようになり、今現在の風習につながっているのです。
ただ、うなぎを食べる由来は平賀源内の説以外にもいくつか存在します。
一つは、江戸時代を生きていたある狂言師が“土用の丑の日にはうなぎを食べれば病気にならない″という内容の狂歌を制作したという逸話です。
また、うなぎ屋さんが大量にうなぎを注文されて、子の日・丑の日・寅の日に蒲焼を焼いたら、丑の日に作ったうなぎだけは悪くならなかったという言い伝えも残っています。
このように、うなぎを食べる習慣には諸説あるのですね。
<どうしてうなぎを食べるのは夏だけなの?>
土用の丑の日は、「「土用」の意味は?」の項目でもご紹介した通り、夏だけでなく、他の3つの季節にも存在します。
しかし、うなぎを食べるのは夏の土用の丑の日だけです。
そもそも、うなぎは冬が旬なので、なぜ冬の土用の丑の日に食べないのか不思議に思いますよね。
その理由は、前の項目でお伝えした平賀源内のエピソードから引き出すことができます。
平賀源内が店先に宣伝の紙を貼った対処したのは夏でした。
この言い伝えにちなんで、夏の土用の丑の日に限定してうなぎが食されているのです。
ただ、このエピソードだけでなく、夏にうなぎを食べる理由には科学的な根拠があります。
それについて、早速次の項目で見て行きましょう。
<夏に効くうなぎの効果とは?>
平賀源内が途方に暮れたうなぎ屋を助けるためにうなぎを宣伝したことから、うなぎが食べられるようになったと言い伝えられていますが、実は平賀源内は適当にうなぎを宣伝したわけではありませんでした。
博学な源内は、うなぎが夏に効果を発揮することを知っていたのです。
実際に「万葉集」には大伴家持による「石麻呂(いしまろ)に 我もの申す夏痩せに よしといふものぞ 鰻(うなぎ)とりめせ」と詠われた短歌がおさめられているのです。
恐らく、平賀源内はこの短歌を知っており、夏の時期にはうなぎが体に良いと庶民に宣伝したと考えられているのです。
平賀源内がうなぎを宣伝した当時は、まだうなぎの効能について科学的に証明されていませんでしたが、現在となっては夏のうなぎが健康良いことが確認されています。
うなぎにはビタミンA・B1・D・Eや鉄、カルシウム、亜鉛をはじめとしたミネラル、そしてDHAを豊富に含んでおり、視力の低下防止、肌荒れ防止、風邪防止の効果を持っているのです。
その中でもビタミンAは疲労回復を促進する働きを担っているので、夏の暑さに疲れた体に大きな効果をもたらしてくれます。
また、ビタミンAにはレチノールという成分が含まれており、細菌に対する抵抗力増進、皮膚の活性化、免疫力向上などの効能があります。
DHAやEPDは、動脈硬化などの生活習慣病の予防を促進する働きがあり、善玉コレステロールを増やします。
さらに、うなぎに含まれているムコ多糖質という成分が、消化や吸収を助け、胃の粘膜を保護する働きを担います。
このように、うなぎには健康促進する成分が多く含まれているため、体力が低下する夏には欠かせないのです。
【まとめ】
この記事では、土用の丑の日についての豆知識をお伝えしましたが、やはりこの行事も中国の「五行説」が深く関係していたのですね。
日本の行事の由来を調べてみると、いかに中国からの影響が強いか痛感します。
また、平賀源内の話も興味深いものですね。
単に宣伝しただけではなく、実際に夏のうなぎが体に良いということを分かっていて宣伝した点は、さすが、功名な学者ですね。
今年の土用の丑の日には、今回ご紹介したエピソードを思い出しながらうなぎを食べてみましょう。
ちなみに、土用の丑の日の習慣としては、お風呂に桃の葉を入れて「丑湯」に浸かったり、雨で湿った服や本を陰干したりする「土用干し」などの風習があります。
実際に日本の文化体験の一部として、試してみるのも楽しいものですよ。
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