ちょっとした余暇に読んだ1冊が、その1冊の中の一文が、自分の生涯の転換点となることは、大いにあり得るものです。
これから、長い生涯を手探りで進んでゆく大学生にとって、本は暗闇を照らすランプのようなものです。
私自身も1冊の本により視界が開けた経験があります。
大学時代に、そして人生のどこかで、そんな本とめぐり会うことができたら、その後自分を取り巻く世界は全く変わるでしょう。
今回は、大学生の方におすすめしたい5冊についてご紹介します。
目次
大学生の方におすすめしたい本5選!読書は暗黙を照らすランプのようなもの!
大学時代は自由な時代でありながらも、まだ自分の行く末も分からない、不安定な時期でもあります。
自分は何がしたいのだろう、こう思う場面にたくさん遭遇するであろう皆さんには、自分の灯となるような、不確定な人生の暗闇を照らしてくれるような本を見つけることをおすすめします。
手当たり次第本を読んで行くのも良い方法ですが、今回は大学生の年頃の方が読んで自分の糧にできるような本を5つご紹介しようと思います。
今回は私自身の読書の所感を綴るのではなく、あくまでも紹介という形でご紹介します。
したがって、各々の本の内容については踏み込まず、「どのような時に読みたい本で、何について知ることができるのか」という点に焦点を当ててお伝えしますね。
それでは最初の一冊目です。
・人生の転換期に読みたい本
自分の道を進もうとする時、わずかな一歩を踏み出すのに躊躇してしまいます。
しかし、時には思いきって、今まで歩いてきた道を踏み外してみなければ何も変えられないこともあります。
「道を踏み外すのが怖い」という気持ちよりも、「自分しか歩くことのできない世界に飛び込んで行きたい」という気持ちが勝る時、私たちはやっと、自分がいるべき場所に身を置くことができるのでしょう。
人は皆同じ場所に向かうべきだなんて決まりはありません。
そのような点では、常識と呼ばれるものも存在しません。
しっかりと自分の足で立ち、自分の満足の行くように自らの命を使いたい、こう思うのは特別なことではなく、自然なことです。
この気持ちを行動へと導いてくれる1冊は、サン・テグジュペリ『人間の土地』です。
周知のように、サン・テグジュペリは『星の王子様』で有名な作家です。
『人間の土地』は、作家でありながら、飛行操縦士の職にも就いていた彼の自伝的なエッセイです。
当時の飛行操縦士たちは、いつ不慮の事故に見舞われるか分からない状況のもと、常に大自然と対峙しながら郵便物の配達に励んでいました。
サン・テグジュペリもその一人であり、つねに「死」や「砂漠の渇き」と共存しながら職務に取り掛かっていました。
しかし、この「死」や「渇き」を感じられるような厳しい仕事は、彼にとって生きることそのものであり、同時に幸福でもありました。
現代に生まれた私たちは、仕事において「死」と隣り合わせになることはありません。
毎日職場に行き、パソコンの前に座って、粛々と一日の作業をする。
自分の命がどうなるか、ということについて考える必要のない、守られた環境に身を置いています。
しかし、このような環境の中で、自分の「死」を感じられるような経験を渇望している人は、実のところ多いのではないでしょうか。
自分の「死」を感じられる体験、と表現してしまうのは大げさな気もしますが、少なくとも「自分が生きているという実感、自分は命のかたまりであるという実感」を現代の私たちは欲しているのかもしれません。
守られた場所から抜け出し、自分の命を存分に感じて生きることへの決意に踏み切らせてくれる力強い一冊が『人間の土地』です。
サン・テグジュペリが飛行操縦士の仕事を通して自分の「生」を感じたように、私たちも自分の命を精一杯生きているという感覚を持って生きて行けるのではないでしょうか。
・「愛」について考えたい時に読む本
大学生になってから初めて恋愛を経験する方も多いでしょう。
恋愛は自分本位ではなく相手本位でないと続かないものです。
恋人だけでなく、自分の周りにいる人を大切にする、つまり愛するということは、「好き・嫌い」といった一時的な自分の感情ではなく、「技術」であると唱えたのはエーリッヒ・フロムです。
彼の著書『愛するということは 』愛するということは、今なお世界のベストセラーとして、日本でも多くの人々の関心を集める著作です。
書店に足を運べば、目立つ場所に置かれており、様々な著名人からの推薦の言葉が寄せられているのを目にするでしょう。
人を愛するということは、「一種の″感情″なのではなく、″技術″として磨いていかなければ身に付けることができないこと」、「人は孤独を癒すために人を愛するのだということ」。
このように、本書の中で述べられているフロムの鋭い洞察は、私たちの「愛」についての今までの見解をひっくり返してしまうほどの威力・破壊力を有しています。
恋愛はもちろん、友達や家族、そして自分自身に対する「愛」とは何なのか、このような問題について考えるための材料を与えてくれるような一冊です。
他者と自分自身の狭間で、『愛するということは 』「孤独であるということ」について、思いめぐらすことがあるならば、手に取って読んでみてください。
・東洋人であることについて考えるための本
大学生であれば、外国の文化や、海外の人と関わる機会もあることでしょう。
その時に意識するのは自分が東洋人・日本人であるということです。
「自分は東洋人・日本人だからこうなのだ」と決めつけるのは良いことではありません。
しかし、自分のルーツである東洋・日本について知ること、そこはどのような場所であるのか知っておくことは、これからの世界を渡り歩いてゆく際に必要な力となります。
日本人・東洋人がどのような考え方を持ってきたのか、何を大切にしているのか知りたいのであれば、岩波文庫の1冊がおすすめです。
その1冊とは、鈴木大拙『東洋的な見方 』です。
『東洋的な見方 』では、仏教、とりわけ「禅」を通して、東洋の本質や東洋人・日本人のものの見方に迫ります。
この本では、東洋の思想について書かれているだけではなく、西洋人の考え方や、東洋と西洋の違いについても、鋭い視点に立って指摘しているため、より立体的に東洋というものの本質が浮かび上がります。
著者である鈴木大拙は、禅の道を進み、老荘思想や大乗仏教などの東洋的伝統を体現しながらも、アメリカ人の妻を持ち、25年に渡って海外で活動した人物です。
東洋にも西洋にも親しんだ著者の見解は、私たちに大きな示唆を与えてくれるものとなるでしょう。
・アジアの国際関係について考えたい時に読む本
日本人であり、そして日本に住んでいる限り、この国を取り巻くアジアの動向からは目を離すことができません。
中国や韓国、ロシア、そして日本と大きな関わりを持つアメリカ。
これらの国々は今だけでなく、何十年も、何百年も、何千年も前から密接に関係し合い、歴史の層を重ねてきました。
ニュースを見てアジアの状況を把握するだけでなく、今まで辿ってきた歴史についても考察してみると、現在自分たちの国はどのような状況に立たされているのか、少しずつ見えてくるでしょう。
そこで、19世紀のアジア史を扱った良書として、是非読んでおきたい本があります。
三谷博・並木頼樹・月脚達彦(編)『大人のための近現代史 19世紀編 』です。
この本は、私が大学生の頃にゼミで輪読した本です。
本書の優れた点は、いわゆる歴史概説書のように、過去の事実を淡々と述べる退屈な本とは全く異なると点です。
一般的な歴史書とは異なり、この本では最新の歴史研究で明らかにされた新発見や、今後の研究課題について、歴史を専門としない読者にも分かりやすく紹介しています。
特に、今まで歴史研究者の間でも常識とされてきたことが、どのように覆されたかについて書かれているので、歴史を専攻している学生でなくとも、躍動感ある歴史研究の面白さに触れることのできる内容となっています。
19世紀の中国・韓国・日本・ロシア・アメリカの関係に重点を置いている本なので、現代を生きる私たちにも大きなヒントを与えてくれることでしょう。
歴史を学ぶ魅力は、今まで当たり前だとされてきた過去の出来事について「疑いの目」を持って精査することで、常識が180度ひっくり返されてしまう点にあります。
「常識は、実は常識ではない」ということは、歴史以外のことについても当てはまるでしょう。
このような視点を得ることができれば、普段自分の身の周りで生じる出来事についても、その裏に隠された部分まで見通そうとする姿勢を獲得することができるでしょう。
・個人と社会の関係について
大学生は学生でありながらも、「社会」と呼ばれる世界に片足を突っ込んでいます。このように微妙な立場に立つ時期には、「社会」と呼ばれるものについて意識せざるを得ないでしょう。
しかし、それと同時に「自分はこれからどうしたいのか」と思い悩む時期でもあります。
「自分」と「社会」について考える機会を与えてくれる一冊は、夏目漱石が著しています。
夏目漱石は日本人であれば誰もが知っている定番の文豪ですよね。
彼の著作は『吾輩は猫である』、『坊ちゃん』などをはじめとして、多くの世代に読み継がれています。
彼の作品は小説が目立ちますが、実は優れた講演の名手でもあり、講演内容も残されています。
夏目漱石『私の個人主義 』は、現代日本(つまり、漱石が生きていた当時の日本)について、職業について、個人の生き方について、日本各地で講じた内容を収録した本です。
大学生であれば、この本の中の「道楽と職業」『私の個人主義 』と題された講演は興味を持って読めるかもしれません。
この2つは、自分が個人としてどのように生きてゆくのかという問題に関して漱石が語ったものです。
漱石は近代の個人主義思想を軸にして活動した人物であり、国のため・家のためという日本古来の封建的な考えとは立場と異にしていました。
しかし、彼の唱える個人主義とは、自分本位・利己主義的なものではありませんでした。
それでいて、人は他者のために自分を犠牲にするのでもなく、個人の(自分自身の)生涯を生きるべきだとしながらも、個人が社会と関係を持つことについて深く考察しています。
大学生の方は、これからどのような生涯を送ろうか悩んでいることでしょう。
個人としての自分を維持しながらも、社会とどう関わるべきかについて考える際には、この1冊から大きなヒントを受けることでしょう。
また、夏目漱石自身の経験と、その経験から考えたことについても講演の中で触れられているので、全く先の見えない大学時代に一読すれば、巨人の肩に乗ったように、目の前の視界が開け、自分の進むべき方向も見えてくることでしょう。
このように、『私の個人主義 』は、あらゆる問題に関する、漱石の俯瞰した視点を読み取ることができる魅力的な本です。
しかし、この本の楽しみは内容そのものに留まりません。
夏目漱石のユーモラスで滑稽な語り口、そして聴き手を引き込むような話の展開もまた、読者の心を動かすのです。
ユーモアのセンスを持って、諧謔的に物事を抉り出す愉快な生き方も、読者に大きな影響を与えてくれます。
このような彼の視点を盗んで、自分のものとしてみるのも楽しみの一つです。
【まとめ】
今回は、大学生の方におすすめしたい、読み応えのある5冊を選んでみました。
どれも楽しんで読むことができると同時に、自分が抱えている課題についてなんらかの働きかけをしてれる本でもあります。
人それぞれ自分の興味は異なりますが、今回ご紹介した本で興味を持てたものがあれば、是非ご一読くださいね。
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