小説には、その世界観に没頭し、登場人物になりきるという楽しみ以外にも、もっと多くの楽しみ方があります。
それほど奥の深い小説ですが、具体的にはどのように楽しめば良いのでしょうか。
普段から小説を読む方も、これから小説を読んでみようと考えている方も、より充実した読書を試みたいものでしょう。
そこで今回は小説の楽しみ方についてご紹介します。
目次
小説の楽しみ方とは?小説は世界を見る方法を教えてくれる!
本には様々なジャンルがありますが、その中でも特に小説が好きな方は多いのではないでしょうか。
自分とは別世界の物語を覗く体験は、何事にも代えがたい楽しみです。
また、小説は勉強のための読書というよりも、純粋な楽しみとしての側面が大きいものでもあります。
それでいて、小説は純粋な楽しみにとどまるだけでなく、自分にとって大きな糧にもなります。
自分とは違う世界に没頭して、主人公になり切るというのも1つの楽しみではありますが、小説にはそれだけにとどまらない粋な楽しみ方があるのです。
今回は、より楽しく小説を読むための方法についてご紹介します。
<小説の楽しみ方>
それでは早速小説の楽しみ方について1つずつ確認して行きましょう。
そして、これなら楽しんで読めそうだと思った方法を見つけたら、早速実践してみてくださいね。
・内面的な旅をする
小説の良い点は、どこにも出かけなくても、普段の生活に潤いをもたらしてくれる妙薬であるということです。
腰を下ろして本を開けば、違う世界へと旅に出かけることができます。
休みの日にどこかへ出かけることも、余暇の一つの過ごし方です。
しかし、すこし遠くへ行くには時間とお金と体力がかかります。
小説を読み、別の時空間へと旅立つことに、時間もお金も体力もかかりません。
別の世界に行きたい時、本を開けば今自分がいる場所から飛び立つことができます。
旅行や外出は現実の世界を通して、外に意識を向ける冒険です。
その一方で、小説を読むことは本の世界に生きている別の人間を通して、物語の中に自分の断片を見つける冒険です。
つまり、外出は外向的な冒険、小説を読むことは内向的な冒険と呼ぶことができるでしょう。
どちらもバランス良く行うことが人生を豊かにしてくれるものです。
小説を通した内面的な旅は、私たちに何をもたらしてくれるのでしょうか。大きく分けて2点考えられます。
1つ目は、先ほど少し触れたように「別の人間を通して物語の中に自分の断片を見つける」ということです。
自分の断片を見つける、つまり物語の中に自分を見るような、そんな感覚になることがあるでしょう。
それは物語の中の登場人物の立場や状況が自分と似通っている場合はもちろん、自分の生きる世界とはあまりにもかけ離れている場合にも体験するものです。
前者についてはおそらく想像しやすいでしょう。
小説を読んでいると、登場人物のこの言動に親しみを感じる、自分と似ている、と思うようなことに多く出会います。
その一方で、後者の場合にも自分を見るような感覚になるということは、一体どのようなことでしょうか。
それは、「小説のある部分に違和感を持って反応する自分」を発見するということです。
このように、物語を読むということは他人の世界を覗いているようでいて、実は自分の世界を覗くことを意味しています。
内面的な旅をすることが小説の醍醐味の一つなのです。
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・心の栄養にする
私たちは毎日を過ごす中で、楽しいことにも大変なことにも巡り合います。
ずっと幸福な気持ちに満たされていれば良いものですが、多くの場合は、何かに追われていたり、心配事を抱えていたり、せわしなく日々を送るものです。
そんな時に、小説の本を紐解く時間を設けることで、揺らいでいた心を鎮静することができます。
小説の世界の中でも喜怒哀楽の人生が展開されていますが、一度本を開くと気持ちが静まるのです。
それはなぜでしょうか。
本の中で起こっている世界は現実とはまた異なり、読者は全ての出来事を俯瞰して眺めることができます。
読者は小説の世界に浸りながらも、どこか高い場所から事の起こりや行く末を眺めているのです。
そのため、感情的にならずに人間の営みや心の機微について考えることができます。
このように、人間を俯瞰する視点を獲得できるため、小説を読むと今までせわしなく、落ち着かなかった心が安定するのです。
普段の生活では、気付かぬうちに多くのストレスを抱える方が多いものです。ストレス解消の方法を模索している方も多いでしょう。
「ちょっと最近疲れ気味だな」と感じている方には、小説を読むことがおすすめです。
小説に限ったことではありませんが、読書にはストレスの軽減効果があります。
これは研究に基付いた実験によって明らかにされている効果でもあります。
イギリス・サセックス大学の研究チームがストレス軽減に効果のある活動を調べたところ、読書が68%のストレス軽減効果を持っていることが分かりました。
その他の活動では、音楽鑑賞が61%、コーヒーを飲むことが54%、散歩が42%、ゲームが21%の効果を持っていることが明らかにされています。
つまり読書が最もストレスを軽減する活動であったのです。
忙しい方は寝る前の15分間だけでも小説の本を開き、そこに描かれている人間模様を、小さな箱の中を覗くように眺めてみてください。
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・想像力を豊かにし、感性を磨く
学生、特に受験勉強に励んでいる受験生や、こなすべき仕事の多い社会人の方は淡々とした1日を送られることが多いでしょう。
ものごとを淡々と、粛々とこなすのが得意な方もいるかもしれませんが、人間単調な毎日を送っているとストレスが溜まります。
なぜストレスが溜まるのかというと、自由な想像を膨らませたり、感性を発揮させたりする場所が限られているためです。
論文の勉強であったり、創造性の求められている仕事であったりする場合には、ある程度の自由が許されますが、単調な受験勉強やデスクワークの場合にはどうしても想像力を膨らませる余地がありません。
そのような環境に身を置いている方にこそ、想像力や感性の自由を与えてくれる場所が必要です。
その一番手軽で身近な手段が小説を読むことなのです。
小説の本にはたいてい絵が描かれておらず、文字だけで世界が描かれています。
そのため、情景や登場人物の表情・動きは、自分の好きなように想像することができます。
また、心の琴線に触れるような印象深い描写・一文に出会うこともあります。
文章自体が自分の感性を刺激してくれるのです。
このように、長い時間閉じ込めていた自分の想像力や感性を、しっかりと解放する手段としても小説を楽しむことができます。
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・綺麗な日本語に触れることができる
小説では綺麗な日本語に触れることができる点も楽しみの1つです。
最近は英語をはじめとした外国語の学習熱が高くなっている反面、日本語が乏しくなっています。
略語や外来語が増えて、昔から日本に伝わる美しい言葉が使われなくなっています。
国境を越えたやりとりは増えていますが、昔から日本に存在する言葉も身に付ける必要があるのではないでしょうか。
綺麗な日本語の使い方を学ぶのであれば、小説を読むことが一番の近道です。
小説の中には最近聞かないような美しい日本語がたくさん散りばめられています。
そして、日本語の語句がただ単に散りばめられているだけでなく、文章で紡がれて1つの響きを持っています。
1つの語句がどのようにして文章の中で生きるのか、そのようなことに注目しながら小説を読んでゆくことで、日本語の表現力も豊かなものとなります。
自分の中に多くの言葉を蓄積していれば、言いたいことを自由に表現することができます。
自分に言葉が足りないと、言いたいことも上手く伝わらず、もどかしいものです。
小説を読んで、日本語を深く味わい、自分自身に言葉という巧妙な道具を与えてあげてください。
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・ユーモラスな視点で人間を見てみる
小説には必ず人間模様が描かれています。
登場人物がたとえ人間でなくても、人間のような人格を持って描かれます。
そして小説には悲劇的な小説も、喜劇的な小説もどちらも存在します。両方とも読むことで、小説の意義は深まります。
しかし、今回はあえて悲劇的な小説に焦点を当てて小説の楽しみ方について考えてみます。
悲劇的な小説や重い題材の小説は、読んでいると自分の気持ちも暗くなりそうだと思うかもしれません。
しかし、小説を読むのであれば是非、悲劇的な小説も楽しんでみたいところです。
悲劇的でテーマの重い小説は、名作となることが多いものです。
なぜ悲劇的な小説に価値が置かれることが多いのでしょうか。
それは、どんな状況に直面しても起きたことを受け止め、物事を滑稽なものとして観察し、軽やかに乗り越えてゆく心を養うような作品であるからです。
私たちは困難なことにはできる限り巡り合いたくないし、他人から迷惑を被るような状況を避けたいとも思います。
しかし、自分の他に人間が1人でも存在する時点で何かしらの迷惑を掛けてしまうのは当然のことです。
特に、家族や恋愛においては良いことばかりではなく「迷惑だ」と感じることも多々あるでしょう。
その度が過ぎれば「迷惑」を乗り越えて「悲劇」にもなるでしょう。
しかし、「迷惑だ」「悲劇だ」と思いそうになった時に、自分に起った「悲劇」をどこか高い場所から俯瞰することができれば、重く受け止めすぎずに済むということが分かります。
また、その悲劇を、ユーモアを持って受け止めることができれば、自分を犠牲者だと思わずに済みます。
読書家として知られている、宮崎駿さんの印象的な言葉があります。
「他人に迷惑をかけないなんてくだらないことを誰が言ったのか知らないんですけれども、人間はいるだけでお互いに迷惑なんです。お互いに迷惑をかけあって生きているんだというふうに認識すべきだってぼくは思う。」
生きていれば、誰かのせいで悲劇を被った、迷惑を被ったと思う場面は多いことでしょう。
たとえば、何の理由も言い渡されずに恋人に振られてしまったり、会社で部下の失態の尻拭いをしなければならなかったりすることもあるでしょう。
しかし、小説を読んでおくことで、まさに「人間はいるだけでお互いに迷惑」をかけているということが分かります。
自分自身もどこかで迷惑を掛けているのかもしれない、と気付くことができるのです。
悲劇的な小説を読むことで、他人を許せるようになり、さらに自分の身に何が起こってもユーモアたっぷりに受け止めていくことができます。
自分を可哀想な人間だと思うよりも、人間世界は実に滑稽なものだと思って生きていた方が、楽しく暮らせるでしょう。
悲劇的な小説を読むことで、かえって自分の人生を軽やかに進んで行くことができるというのは、逆説的であり、興味深い点です。
特に悲劇的な物語でありながら、諧謔的でユーモラスな作品は本当に面白い作品であることが多いものです。
【まとめ】
小説は人間が生きて行くための知恵を与えてくれるものです。
何かとせわしない毎日を過ごさなければなりませんが、小説を読み、その物語の中で描かれる人間模様を眺めることで、自分が日常の流れの中に埋もれずに済みます。
小説を読むことで身に付けたユーモアのセンスを持てば、世界はもっと面白いもので溢れて見えるでしょう。
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