書物はいくら読んでも次から次へと読みたいものが現れるものです。
東大生はそのような読書欲に正直な学生が多く、たくさんの本に出会う中で名作に出会います。
本選びの達人である東大生がおすすめする本とはどのようなものなのでしょうか。
彼らは人の感性を磨いてくれるような作品を読んでいます。
大量の本を読みこなす東大生が、手に取った数々の書物の中で最も衝撃を受け、おすすめする本について、私の友人を例にランキング形式で5選ご紹介します。
目次
東大生がおすすめする読書本ランキング!ベスト5選
読書の達人である東大生が選ぶ本は、やはり予想を裏切らない名著揃いです。
どのような本であっても、ある目的があって書かれているため、無駄なものはないと私は思います。
しかしそれと同時に、時間はまた限られたものであり、その時間の中で可能な限り良い本に出会いたいのも事実でしょう。
そのような時には、熱心な読書家にどの本が良いか教えてもらうことが一番です。
そこで、今回は読書が好きな東大生の友人から以前すすめてもらった5つの本についてご紹介します。
どれも、読む者の心を震わせるような本ばかりです。早速見て行きましょう。
第5位:夏目漱石『こころ』
夏目漱石の『こころ』は、中学・高校でも授業で扱ったことを覚えている方も多いかもしれません。
主人公という人物と「先生」とのやり取りが中心となって話が進められていく小説ですが、その大部分が「先生」からの遺言書で占められています。
この遺言書の中で「先生」は、今まで自分の中に閉じ込めていた秘密を打ち明けます。
「先生」は若い頃、ある一人の女性に恋慕を抱きましたが、親友Kも同時にその女性に憧れを抱いていました。
そのことに気付いてしまった「先生」は、その女性を無理やり自分のものにしてしまいます。
親友はこのことを知り、亡くなったのです。
親友を苦しめて間接的に親友が亡くなったことに、先生はその後の人生でどれほど罪の意識を抱いてきたことでしょう。
人間のエゴ、恋愛を巡った陰の部分、そして罪の意識という問題を、シンプルな物語と分かりやすい文章で以って鋭く切り取り、漱石の人間存在に対する深い洞察を垣間見ることができる物語です。
この物語の面白い点は、ライバルに憧れの女性を取られてしまった立場の人の心境が描かれているのではなく、その逆の立場、つまり憧れの人を奪い取った側の人間の心境が描き出されているという点です。
憧れの人を自分のものにしたのですから、勝者のように見えますが、実はこの勝者の心は罪悪感で一杯に満たされているのです。
彼は恋慕を抱いていた人とめでたく結ばれましたが、結局はその罪悪感からと自ら命を絶つ選択に追い込まれます。
エゴがもたらした理不尽な結果に耐えきることができなかったのです。
この小説は暗い、じめっとした雰囲気ですが、私たちにエゴイズムと罪の意識について考えさせる機会を与えます。
ここまで重い状況に陥った経験はあまりないかもしれませんが、私たちも自分の利己的な行動が原因で罪の意識を持った経験があるでしょう。
悲劇でありながらも、身近な経験と結びつけやすい小説なので、漱石の文学作品の中でもとても読みやすい部類の小説です。
「こころ」という題名からも推し量ることができるように、人間の「こころ」の機微に触れるには、この小説がおすすめです。
第4位:ジェームズW.ヤング『アイデアのつくり方』
ジェームズW.ヤングはアメリカの最大広告代理店J・ウォルター・トムプソンの副社長の任務に就いていた人物です。
『アイデアのつくり方』は、シカゴ大学の大学院で公告を専攻する学生に向け、彼が講義した内容と、実業家の集まりにてスピーチした内容を簡潔にまとめたものです。
卓越したアイデアを生み出すために、実践する必要のある具体的なステップを5段階に分けて詳細に解説しています。
アイデア作成のために必要な5段階のステップについては、ここでお話ししてしまうとお楽しみが無くなってしまうので、詳しくはお伝えしないことにします。
ですが、特に印象的な個所だけはご紹介しておきたいと思います。
それは、ヤングの提唱する″アイデア作成の第3段階″の中で述べられています。
アイデアを作成する準備では、必要な資料を集めて調査を進めますが、この″第3段階″に達した時には、資料を咀嚼しながら自分が洗い出した問題・課題を一旦すべて棚に上げて良いというのです。
そして、問題を棚に上げて何をするべきかという点がまた示唆に富んだものです。
何をするべきかというと、自分の想像力・感性に刺激を与えてくれるものに注意を向けてること、つまり、音楽鑑賞をしたり、詩を詠んだり、演劇・映画を見たりする必要があると言うのです。
私たちは芸術に触れることの重要性を、折に触れて教え諭されますが、なぜそれが大切なのかという根拠についてはあまり教わりません。
そのため、芸術に触れる意味がよく分からず、一時的で刹那的な楽しみについ浸りがちです。
しかし、芸術に触れることで凝り固まった自分の心を開放し、解法された心は優れたアイデアを生み出すことができるということが、本書では証明されているのです。
実利・実践が重要視されている社会において、芸術に親しむことに何の意味があるのだろうか、芸術という非実用的なものに時間を費やして何の利益があるのだろう、といった疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。
このような疑問を抱いている方にも是非読んでいただきたい1冊です。
全てのことは無駄ではない。
一見遠回りのように見える作業も、すべて優れたアイデアを生み出すための大きな源となる。
このことに気付かせてくれる、真髄を突いた名著です。
『アイデアのつくり方』は、著者自身が副社長ですが、ビジネス界のみにかかわらす、あらゆる分野に共通するエッセンスが詰め込まれた本です。
今あなたが学生で、進路が決まっていなくても、どのような進路に進むにしても、著者が仕事を通して得た知恵を学ぶ価値は大いにあるのではないでしょうか。
第3位:ショーペンハウエル『読書について』
ショーペンハウエルの『読書について』はあらゆる読書家が決まってすすめる名著です。
この本は一文一文が名言の連発だと言っても過言ではないくらい、読書の真髄をついたものです。
読了すれば、ショーペンハウエル自身の読書という行為に対する深い洞察力に驚愕するでしょう。
それほど、私たちが常識だと思う読書方法を覆す、衝撃的な発言が多いのです。
さて、この本で一体何が衝撃的なのかと言えば、「読書の暗黒面・読書がもたらす害」を中心に論じられている点です。
「まさか読書が害をもたらすことがあるのか」と驚きますよね。
私たちはあらゆる場所で読書をしなさいと教えられるし、読書は自分の想像力を膨らましてくれるものだと信じています。
このような思い込みが、実は読書の落とし穴にはまる要因となることを、本書では警告しているのです。
この本の中で最も注目したい箇所は「読書は他人にものを考えてもらうことである」という箇所です。
確かに読書をする際、私たちは自分の思考はひとまず脇へ置いておき、作者の思索の跡をたどりながら読み進めます。
つまり、読むことに夢中で思考停止状態です。
これでは読書を行う意味が無いではないか、ということをショーペンハウエルは指摘しているのです。
また「ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く」という部分も、わが身を振り返らせるような痛烈な一言です。
最近は多読や速読の技術を身に付けるための講座なども開かれていますが、そのような状況に釘をさすような発言ですよね。
しかし、彼は速読や多読を否定しているのではなく、「多読や速読をする時も、必ず自分でものを考える時間を持つようにしよう」ということを言っているのです。
つまり、この本の全体を通して、ショーペンハウエルが読者に伝えたかったことは、「自分でものを考えながら読書する」ということなのでしょう。
速読や多読を行うにしても、読書で一番大事な部分である「自分の思考力を深める作業」はないがしろにしないようにしたいものです。
第2位:カフカ『変身』
カフカの小説は非常に難解で理解するのに苦労する小説が多いですが、『変身』は彼の作品の中でもかなり読みやすいものです。
しかし、現代社会への洞察に満ちた物語であるという点がその魅力となっています。
主人公が突然虫になってしまうという設定が衝撃的な、悲劇でありながらもユーモアに富んだ物語です。
主人公のザムザは一家の大黒柱として勤勉に働く若者ですが、ある朝、仕事に出かけるために起きようとすると、自分が″害虫″と化してしまったことに気付きます。
なかなか起きてこないザムザに、家族や職場の担当者が心配しますが、虫の姿になってしまったザムザを一目見て、彼らは恐れおののきます。
家族はその害虫がザムザであることを分かっていながらも、次第にザムザを気に留めなくなり、最後には死んだザムザを置いて家を出ていってしまいます。
このように、比較的単純な物語なのですが、これは一体何を表しているのでしょうか。
それは「人間世界に所属するためには、周りの人間と同じようにふるまうべきだという掟が重要であり、それを破る者は人間としてさえ見なされない」ということなのではないでしょうか。
常識だと思っている世界で「良い人間」であろうとすることは、ある意味非常に不自然なことなのかもしれません。
社会の中で生きてゆくためには、「正常な人間」でなければなりません。
しかし、私たちはある日突然職を失ってしまったり、事故に遭ったり、今まで抑えていた本来の自分を表に出し始めたりして「変身」することもあります。
しかし、今までの自分と違った姿へ「変身」してしまうことで、普段自分を受け入れてもらっている社会からは見放されてしまうことが多いのです。
「正常な人間世界」はいわゆる「道を外れた者」に対して冷徹な世界でもあります。
あらゆる人間が共存するためには、今私たちが生きている「正常な社会」を変えて行かなければならないのかもしれません。
第1位:シュリーマン『古代への情熱』
シュリーマンの『古代への情熱』は、自分の夢を強く抱き、邁進して行こうとする人々の精神を奮い立たせてくれる名著です。
シュリーマンは幼い頃から、プロテスタントの説教師であった父親からギリシャ神話について聞かされていました。
彼が慣れ親しんでいたギリシャ神話には、伝説の都市「トロイヤ」が登場します。
シュリーマンはこの都市が必ず存在すると信じて、いつか必ずこの都市の遺跡が現実に存在したことを証明しようと心に決めました。
彼は、強力な意志と優れた計画性を持って、発掘資金を集めるために事業を起こし、資金を集め、遂にはトロイヤを発見します。
さあ、私たちはこの本から、何が得られるのでしょうか。
一番に彼の書を読む人々の心を掴むのは、彼の「伝説の都市への憧れ」です。
そもそも存在するかどうかも分からない古代遺跡のために、膨大な額の資金を惜しみなくつぎ込むような人が、あなたの周囲にどれくらいいるでしょうか。
子供の頃の夢を捨てることなく、大人になっても抱き続ける。
それだけでなく、そのような情熱は彼の非凡な計画性と実行力を育てます。その1つの表れとして、彼の驚くべき語学力を挙げることができます。
シュリーマンは非常に忙しい仕事の合間に、語学学習に時間を割き、何カ国もの言語を習得します。
これも、すべてトロイア遺跡のために彼が成し遂げたことです。シュリーマンの語学学習法からも私たちは大きなヒントを得ることができるでしょう。
彼は「音読をする」学習法により、驚くほどの速さで数々の言語を自分のものにしました。
「英語は音読が大切」と言われますが、どの言語に関しても、音読が大きな効果を発揮するのです。
このような彼の行動から分かることは、夢への執念を持ちながらも、常に「夢の実現のために必要なことは何か」について考える、冷静で現実的な視点を持るあわせていたことでした。
心は熱く、頭はクールに保って憧れに向かっていたのでした。
「夢への気持ちだけで終わらせない、自分の中に情熱と冷静さを共存させる」。このことがいかに大切か思い知らされるばかりです。
貧しいながらも、トロイアの遺跡への憧れを捨てず、自らの命を夢に投じた人生に、読む者は敬意を抱かずにはいられません。
理想主義と現実主義の両方を忘れず、渾身の力を自分の憧れに注ぎ込みたいものです。
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【まとめ】
今回は東大生がおすすめする本5選についてご紹介しました。どの本も自分の意表を突くような優れた洞察に富んだ名作揃いです。
これらの名作を聞いただけで、私自身も、多くの本に触れて来た東大の友人に感服せざるを得ません。
東大生の読書で感心する点は、今回も紹介されているショーペンハウエルが警告したように「読書をしながらも、きちんと自分の頭で本の内容について考える」ことが徹底されている点です。
私も「考える」という作業を基本に読書にいそしみたいと思う次第です。
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