大学4年生になって取り組む卒業論文が、初めての論文執筆経験であることが多いでしょう。
わたしもその例にもれず、きちんと書く論文は卒業論文が初めてでした。
したがって、いざ卒業論文を執筆しようとしても、ただ書籍の引用を並べるだけになってしまったり、そもそも何のために論文を書くのか分からなかったりします。
今回は大学4年を迎え、これから卒業論文の執筆に取り組む学生向けに、本から上手に引用するコツや、引用・参考文献の書き方を中心にご紹介します。
目次
大学の卒業論文の書き方!本から上手に引用するコツは?
大学4年生のビッグイベントは卒業論文の執筆です。
今後の進路の決定や普段のゼミの活動などで忙しい学年ではありますが、卒業論文も4年間の集大成を示すものなので、力を入れたいものです。
しかし、学術的な論文を書く作業はほとんどの学生が卒論を書く時になって初めて経験します。
そのため、そもそも卒業論文が何の目的を持って書かれるものであるのか、そしてどのように書籍から引用すれば良いのかといったことが分からないまま、期末レポートのようなものを書いてしまうことも多々あります。
今回は、最初に卒業論文がどのようなものであるのかという大事な基本を確認し、その上で引用の仕方に焦点を当てて行きます。
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<卒業論文とは?>
まず初めに、そもそも卒業論文がどのような目的で書かれるものなのか、しっかりとおさえておく必要があります。
何をしたいがために卒業論文を書くのかというと、「何か言いたいことがあるから書く」、つまり「今まで証明されていないことを証明するために書く」のです。
これは卒業論文の基本として、私も卒論執筆時に先生から何度も言われたことでした。
論文を書くことに慣れていないと、「卒業論文は調べたことをまとめれば良いのでないか」と思ってしまいがちですが、調べた情報をまとめるだけでは「レポート」であり、「卒業論文」ではありません。
卒業論文には必ず自分の″オリジナルな視点″から、あるテーマについて根拠をたてながら論じて行きます。
新しく何かを発見し、他の誰もが気付かなかった事実を証明する必要があるのです。
大学教授や大学院生でさえも、誰も気付かないような発見をするのは大変な仕事です。
しかし、卒業論文も「論文(論じる文章)」でなければならないので、研究者と同じようなことに挑戦することが求められています。
学部生のうちは、プロの研究者並みの大発見・優れた発見をするレベルまでは求められていませんが、「自分のオリジナルな視点を持って、新しい発見を証明しよう」とする姿勢だけでも感じられるような論文が求められています。
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<卒業論文に必要な文献数>
卒業論文では書籍からの情報をベースにして、論文を書き上げます。
期末のレポートでは、参考文献が5冊以下でもそれなりに成績を付けてもらうことができます。
しかし、卒業のかかっている卒業論文ではそれなりの文献数が必要です。
それでは具体的にどのくらいの文献が必要なのでしょうか。
端的に言ってしまうと、卒業論文の文献数は多ければ多いほど良いということになります。
なぜ多いほど良いのかと言うと、多くの情報に目を通すことで、自分が扱って行くテーマに関して言及されている事実の信憑性を、しっかりと確認した証拠になるからです。
1つの文献しか参考にしていないと、自分の分析が主観的になってしまい、事実とずれた卒業論文になってしまいます。
卒業論文は先ほどお伝えしたように、「あらゆる事実を調べ上げるだけでなく、さらにそこから浮かび上がってくる課題・問題点について、自分のオリジナルな主張を展開するもの」です。
自分である問いを立て、その問題について徹底的に調べ上げ、自分の見解について書き上げるためには、偏りのない多角的な視点を獲得する必要があります。
そのためにも、卒論を書く準備段階として多くの参考文献を参照する必要があるのです。
卒業論文として見なすことのできる参考文献数は最低でも25冊です。
平均は25~50冊ほどとなっています。多い人は70冊以上にもなります。
卒業論文の提出時期は、学部や学科によって多少異なりますが、大体1月中旬から1月末の間です。
この時期から逆算すると10月頃には最低15冊ほどの参考文献を集めておかないと、卒業論文を完成させるまでに必要な文献数を集めることが難しいでしょう。
10月までに、最低でも15冊を目標に今から準備を進めて行きましょう。
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<本から上手に引用するコツとは?>
先ほどお伝えしたように、卒業論文ではたくさんの本を引用する必要がありますが、的外れの引用ばかりでは、全体的な評価が下がってしまいます。
どのようにすれば、ポイントをおさえた引用ができるのでしょうか。
上手な引用のコツは主に3つあります。それぞれ確認して行きましょう。
① テーマに対する疑問点を持つ
その方法として一番大切なのは、テーマに対する自分の疑問点をはっきりさせておくということです。
基本的なことではありますが、これが一番重要な点です。
自分の疑問点を見失わずに文献資料を集めて行くことで、文献資料のどの部分が大切で、どの部分は特に必要がないのか分け、重要なエッセンスだけを抽出することができるからです。
自分が証明したいことの根拠付けとなる部分を選んで行くことで、引用はあくまでも自分の見解の根拠であるということを示すことできます。
この、「参考文献の引用は、あくまでも自分が証明したいことについての根拠を与えるものである」という点が重要です。
② 仮説を立てる
また上手に引用をするためには、「仮説を立てる」ことが大切です。
仮説とは、「これから自分が証明しようとしている物事からは、結果的にこのような事実を引き出すことができるだろう」と予想することです。
たとえば、歴史を専攻のする学生の卒業論文であれば、次のような仮説を立てることができます。
「日本の開国期、日本は欧米列強と不平等条約(日本側にとって不利な条約)を結ばされたと言われてきた。しかし、本当にこの条約は当時の日本人にとって不平等な条約であったのだろうか。今の日本人から見ると、当然不平等な条約ではあるけれども、当時の人間からすればそれほど不平等だと感じることはなかったのではないか。」
このように、仮説を立てるということは、一般的にはこのように言われているけれども、実は違うのではないか、と想定することです。
つまり、仮説を立てることで、テーマに関して自分は何を明らかにしたいのかが明確になり、本を読んでいる中で、自分の想定した仮説を根拠付けてくれるような部分に出会った時には、その部分を上手に引用することができるのです。
昔、大学の先生は「自分の仮説の味方になってくれるような部分を本から探してきて、それを引用するといい」とおっしゃっていました。
自分の言いたいことを根拠付けてくれるような、味方となる部分を引用にするのです。
先ほどの日本の開国期の不平等条約についての例でいえば、「当時の日本人にとって、それほど不平等ではなかった」という仮説を証明してくれるような根拠を引用すれば良いのですね。
③ 引用の後には自分の仮説の根拠となっていることを述べる
また、実際に引用する時にもコツが必要です。
引用する際には、参考にした書籍の該当箇所をそのまま写し、注を付けます。
その後が大切で、引用した部分から何が言えるのか、どんな発見を引き出すことができるのかということについて述べる必要があります。
自分の立てた仮説に少しずつ根拠を与えていき、仮説の証明に導くためにも、このような作業が必要とされているのです。
<引用の表示方法>
引用の表示方法については、2つの方法があります。
1つは、一文の中に「」で括って引用を示す方法、もう一方は一つの文の中で引用するのではなく、そのまま文章を書きぬいて示す方法です。
言葉だけではあまり理解できないと思うので、実際に引用の例を示してみます。
☆「」で括って引用を示す方法
例:そしてこの「日本民俗舞踊」レビューの創造は「<日本民族の郷土>というコンセプトによってナショナリズムを掲揚しつつ、一方では、そのナショナリティの内実を徹底して複数化し、曖昧にしてゆくという二重のプロジェクト 」という形になり進行して行った。(引用:四方田犬彦『李香蘭と東アジア』東京大学出版会、2001年、36頁)
☆そのまま文章を書きぬいて示す方法
例:柳宗悦の東洋に対する態度について、彼は西洋に対抗するものとして、東洋がある共通性を有していることを認めた。
しかし、東洋の文化を均一化せず、民族を単位とした「複合の美 」の観点に立ち、日本、中国、朝鮮の文化を差異化する必要性を説いた。次の柳の発言にその姿勢が表れている。
「[日本、中国、朝鮮各々の独自性を:引用者注]一色にすることは自然の法則が許さないと思ふ。朝鮮で……日本と同じものができやう訳がない。土もちがふし、風土もちがふんだから 」
このような態度を一貫した上で民芸運動を行ったために、柳は日本のアジアへの軍事行動を常に批判的に捉えることができ、大東亜共栄圏構想の活動に組込まれることを回避できた 。(引用:柳宗悦『月刊民藝』1941年1・2月合併号、41-42頁)
このように引用しておくことで、文章の盗作ではないということを示すことができるとともに、どの部分が自分の主張で、どの部分が引用であるか分かりやすいように示すことができるのです。
文章をそのまま書きぬいて示す方法では、引用部分は本文よりも1マス下げてから書き始めるようにしましょう。
<参考文献の書き方>
さて、引用の書き方をおさえたら、次は非常に重要な参考文献の書き方についてもおさえておきましょう。
参考文献は卒業論文の最後に付けるものです。
なぜ、参考文献が大事なのかと言うと、参考にした書籍・論文を挙げることで、その卒業論文がどのような情報源を使って執筆された論文なのか、読み手に示すという目的以外にも、参考にした本の数でその論文の信憑性が一目で分かるためです。
先生が卒業論文をチェックする時に参考文献の項目を重要視するのはこのような理由があるからなのです。
卒業論文で掲載する参考文献の書き方は、書籍を参考にする場合と、他の学術論文を参考にする場合で若干異なります。
実際に示してみると、次のようになります。
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(例)☆書籍の場合
大谷正『兵士と軍夫の日清戦争-戦場からの手紙を読む』有志舎、2006年
佐々木隆『明治人の力量』(日本の歴史21)講談社、2002年東アジア近現代史学会『日清戦争と東アジア世界の変容』上下、ゆまに書房、1997年
☆学術論文の場合
キム・チェウォン「崔承喜 舞踊活動に対する韓国と日本の反響」『公演文化研究』2010年、211-243頁
イ・ジュミ 「崔承喜の“朝鮮的なもの”と “東洋的なもの“」『韓民族文化研究』23巻、 2007年、 335-359頁
朴祥美「「日本帝国文化」を踊る-崔承喜のアメリカ公演(1937-1940年)とアジア主義―」『思想』2005年7月、126-146頁
書籍の場合と学術論文の場合の共通点は、記載順が同じであると言うことです。
著者名、題名、出版社(または雑誌名)、発行年月日、ページの順に記載します。
それでは書籍と学術論文の表示の仕方のどこが異なるのかというと、題名を括る″かぎかっこ″が異なります。
書籍の場合には『』(二重かぎかっこ)を使用し、学術論文の場合には「」(通常のかぎかっこ)を使います。
また、学術論文の場合には、論文が掲載されている雑誌名も、論文の題名の後に記します。
たとえば、上記の【学術論文の場合】で挙げた3つ目の論文では「「日本帝国文化」を踊る-崔承喜のアメリカ公演(1937-1940年)とアジア主義―」という題名の後ろに『思想』と記載されていますよね。
これが、この論文が掲載されている雑誌の名前なのです。
雑誌名には、書籍の場合と同じように『』(二重かぎかっこ)が用いられます。
【まとめ】
今回は卒業論文の書き方の中でも、論文の中で引用をどのように活かしていくのか、そして大事な評価の対象となる、引用や参考文献の記載方法についてご紹介しました。
多くの大学の先生が言うことですが、卒業論文は引用の切り貼りになってしまう学生が多いそうです。
できれば、大学生活の締めくくりには、納得の行く論文を書いて卒業したいものです。
そのためにも、最後にもう一度大事なポイントを確認しましょう。
論文とは「今まで証明されていないことを、自分のオリジナルの視点を持って証明するために書く」ものです。
充実した論文を完成できるように、今からこつこつと取り組んで行きましょう
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