「実用的な学問が必要だ」と言われ、今は社会に出てすぐ役立つ「実学」が必要な時代。
慶應義塾も「実学」を軸に据えた学校として知られています。
しかし慶應の「実学」とは、一般的な「役立つ学問」でなく、物事を自分の目で見て疑い、自分の頭で考えて新しい価値を生み出すこと。
自分の頭で考える実学とは、具体的にどんなことなのでしょうか。
目次
慶應義塾大学の自分の頭で考える実学とは?具体的に紹介!
社会に出て役に立つ学問が「実学」だと思っている人が多いはず。
確かに一般的に言われている「実学」とは、日常や社会ですぐに使える実用的な学問のことを指します。
しかし「実学」を一番大事なモットーにしている慶應義塾において、その意味は全くちがいます。
むしろ、一般的に知られている「実学」とは真逆の意味さえ含んでいるのです。
そして「実学」の姿勢は、変化の激しい社会で自由に生きていくためには欠かせないものです。
一体慶應義塾の「実学」が何を指すのか、この記事でご紹介しますね。
<慶應義塾の「実学」とは?>
慶應義塾の教育でもっとも大事な軸となっているのが「実学」です。
実際に慶應義塾の幼稚舎・中高・大学で行われている授業を見てみると、「実学」が軸であることが分かります。
たとえば、高校時代から慶應に通っていた私の友達は、高校時代の日本史の授業は、奈良時代だけでまるまる半年が終わってしまった、と言っていました。
普通学校で教わる奈良時代なんて、1か月もかからずに終わってしまいますよね。
なぜ奈良時代だけでそんなに時間がかかってしまったのか。
それは授業内で、生徒たちが奈良時代に関する劇を創作し、大学の先生が書いた論文を読んで研究する時間が設けられていたからだ、と友達は言っていました。
これはまさに「実学」です。
一般的に言われている実学とはずいぶん違うじゃないか、と思いませんか。
Wikipediaや辞書で調べると分かりますが、ふつう「実学」というと、日常生活・社会生活の役に立つ学問だと言われています。
しかし、福沢諭吉が唱え、慶應義塾が大切にしている「実学」とは、「すぐに社会で使える技術や知識を学ぶこと」ではなく、「正しいと思われていることが本当に正しいのか、疑問の目を持って研究し、真理を追究していくこと」です。
当たり前だと思われていて、みんなが気にも留めないことに「本当にそうなのか?そうじゃないのではないか」と疑ってみる。
そして実際に検証してみる。
これが、慶應義塾の掲げる「実学」です。
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<役に立たなそうな学問もれっきとした「実学」>
世の中の常識を疑って、自分の頭を使って真理を追究することが「実学」である。
これを踏まえると、一見社会生活で役に立たなそうな学問も立派な「実学」の対象になります。
たとえば私が専攻していたのは、歴史学でした。
歴史を勉強しても、就活の役には立たないし、まして仕事の役には立たないと思うはず。
しかし、これもれっきとした「実学」なのです。
たとえば、江戸末期に諸外国と結んだ条約は一般に不平等条約だと言われています。
実際に歴史の教科書を見てみると、日本にとって不平等な条約だというニュアンスで説明されていますよね。
でも歴史研究の分野では「当時の日本にとっては必ずしも不平等ではない」との研究が発表されています。
つまり一般的な言説を疑って、本当に正しいのか史料を掘り出して検証しています。
学部生レベルでも、卒業論文では先行研究で「当たり前」とされてきたことを、疑うことからはじまります。
まさに、「正しいと思われていることが本当に正しいのか、疑問の目を持って研究し、真理を追究していく」のです。
もちろん、歴史以外の文学や哲学をはじめとした学問も同じく、一見役に立たないようでいて「実学」です。
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<「実学」は社会生活のどんな場面で役立つの?>
常識を疑ってみて、本当にそうなのか自分の頭で考え、証明してみること。
どんなに実用的でなさそうな学問からも、この姿勢を身につけられます。
でも「実学」を具体的にどんな場面で活かせるのか、疑問に思いますよね。
実学は会社勤めでも、個人で仕事していても、大いに活かせます。
たとえば、会社で掃除機の企画を任されたとしましょう。
その時に実学の姿勢を活用してできることは、同じジャンルの既存の商品をリサーチし「この機能では、まだ不十分なのではないか?」疑ってみることです。
つまり「掃除機とはこういうものだ」という常識をひっくり返してみるのです。
常識では考えられない掃除機を企画し、たくさんの人のニーズに合う新商品を開発できればヒットにつながる可能性も高くなります。
常識を疑って、自分の頭で考えることで、新しい価値が生まれるのです。
個人で仕事をする場合も実学の姿勢が功をなします。
たとえばライターの仕事をするとしましょう。
ライターというと「書くこと」がメインです。
しかし、世の中には驚くほどたくさんのライターがおり、「書くこと」だけでは自分を他と差別化できません。
そんな時にやるべきことは、「ライターとは書く人だ」という常識を疑ってみることです。
そう考えると、自分にできることが増えます。
書くだけじゃなくて、写真や動画も撮ってみよう、ライティングだけじゃなくてブログも作って自分自身を発信しよう。
「書く」という一つのことにこだわらないことで、周囲と一味違う「新しいライター」になれるのです。
ライターとして一ひねりしたキャラクターを確立できれば、「面白そうだ」と人が集まり、そこからまた新しい価値を発信できます。
個人事業主も、「実学」の姿勢を使いこなすことで、進化していく世界を切り開くことができるのです。
こう考えてみると、「実学」とは新しい価値を生み出すためには欠かせない手段だと言えます。
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<「実学」を実践する方法とは?>
常識を疑って、自分の目で検証する「実学」を身につけるには、実際に「実学」を実践する必要があります。
せっかくなら、「実学」の姿勢を使いこなし、日常を通して新しい価値を発信していきたくありませんか?
ここでは「実学」を実践する方法をご紹介します。
① 常識になっていることを探し、疑う
注意深く観察していると、日常生活のあちこちに常識だと認識されていることが散らばっています。
みんなが普通だと思っていることって、もしかしたら普通じゃないかもしれない、と考えてみましょう。
身近な例を挙げるとすれば、就職。
大学3年にもなれば、みんな就職活動をはじめます。
でも一度立ち止まって「就職活動が普通だけど、就職しなくても仕事はできるんじゃないかな?」と考えます。
常識としてみんなが疑問さえ持たないことにあえて目を向けると、別の道筋が見えてきます。
② 常識では考えられないことを実現させる方法を生み出す
常識とされていることを見つけたら、常識とされていないことをどう実現するのか、考えてみましょう。
就職せずに生きていくのであれば、どんな方法があるのか、思いつく限り挙げていきます。
もちろん、本を読み、人に聞いてリサーチする必要も出てきます。
いろんな場所から情報を集めてきたら、それらの情報を組み合わせて自分なりの方法を編み出します。
就職しないで仕事をする方法として、Youtubeやブログ、SNSやその他もろもろの手段を利用して自分だけの活動を生み出すことができるはずです。
③ 自分で実践して、発信する
常識とはちがうことをアイディアとして思いついたら、それを自分で実践してみましょう。
当たり前だと思われていることを疑うだけでは、「実学」ではありません。
実際に試して検証してるみてはじめて、ようやく実学を実践できます。
「就職せずに自分で仕事をする」という例で考えてみましょう。
勇気のいることかもしれませんが、就職せずに個人で仕事をする手段(ブログやSNS、Youtubeなど)を実際に使い、自分を発信してみます。
就職せずにライターや、ユーチューバーなどの活動を行うことで、「自分」というブランドに興味を持ってくれる人が集まります。
少しずつ人が集まり、そこから仕事が生まれると、就職しなくても好きなことで仕事できる、と証明できますよね。
このように、①常識を疑う→②非常識を実現させる方法を考える→③実践する、という3つのステップを踏むことで「実学」を実践できるのです。
「実学」の本質は、当たり前だと思われていることに対して「そうではないかもしれないよ」と異を唱えることにあるので、実践するのに勇気がいるかもしれません。
しかし、それ以上に新しい価値を生み出せる可能性の方が何倍も大きい。
進化のスピードが速い時代にこそ、「実学」を実践して今までになかった価値を提供してみましょう。
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【まとめ】
福沢諭吉が唱え、慶應義塾の教育の軸として掲げられている「実学」は、今の時代にこそ必要です。
「実学」はあらゆる場面で役に立ちますが、何よりも自分の生き方に大きな影響を与えます。
普段からアンテナと高く張り、みんなが「普通だ」と言って気にも留めないことに興味を持ちましょう。
そうして「実学」を実践するうちに、思いもかけず、新しい価値を世の中に提供できるのです。
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