「岩波文庫」は多くの方が耳にしたことのあるものでしょう。本好きの方であれば、お気に入りの文庫かもしれません。
岩波文庫は古今東西の名著を集めた出版社であり、創業以来価値のある良書を提供し続けています。
時間に余裕のある大学生は読書に親しむことのできる時期ですが、大学の勉強と並行し、岩波文庫を積極的に読み進めることで有意義な読書生活を送れます。
今回は大学生の読書体験には欠かせない、岩波文庫の魅力やおすすめの本についてご紹介します。
目次
大学生は岩波文庫に親しもう!岩波の魅力とおすすめの本とは?
時間に余裕のある大学生は、岩波文庫に親しむ絶好の機会に恵まれています。
岩波文庫は内容のしっかりとした含蓄のある本が多いので、じっくりと読書に腰を据えることのできる大学生に最適の読書経験を提供してくれます。
また、大学生であれば自分の専門分野を持っているので、普段大学で勉強していることをより深め、補足するためにも、大きな手助けとして利用することのできる文庫です。
せっかく大学に入ったので、自分の専門分野についても確実に知識を吸収しておきたいものですよね。
今回は、大学時代に最も読んでおきたい岩波文庫の魅力や、読みやすいおすすめ岩波本についてご紹介します。
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<岩波文庫とは?>
最初に、そもそも岩波文庫と呼ばれている文庫がどのようなものであるのか、探って行きましょう。
歴史があり、創業者の志を受け継いだ文庫なので、取り扱っている本も良質である理由に納得できるはずです。
まずは岩波文庫の歴史と理念について見て行きましょう。
・岩波文庫の歴史と理念
岩波文庫は非常に有名な出版社であるため、ほとんどの方がその名前を知っていることでしょう。
この文庫はドイツのレクラム文庫を模範とした出版社であり、1927年創業者の岩波茂雄により創刊されました。
当文庫には、岩波茂雄の大きな志が込められており、「古今東西の典籍を厳選しつつ人々の心の糧として提供する」という「永遠の事業」のもと、続けられてきた出版社です。
創業者である岩波茂雄は「労働は神聖である」という考えを大切にし、詩人ワーズワースの唱えた「低く暮し、高く思う」という精神を文庫の理念としました。
岩波茂雄と岩波文庫について、取り上げられた書籍もあるので、ここにご紹介します。
講談社学術文庫から村上一郎(著)竹内洋(解説)『岩波茂雄と出版文化』 が出されています。
この本は日本近代の岩波茂雄を通して近代日本の教養主義について考察した本です。
ご興味のある方は是非ご一読ください。
・100冊で大学4年間の知識が身に付く
出典元:https://toyokeizai.net/articles/-/194041
岩波文庫では、時間のふるいにかけられ、残ってきた名作ばかりを扱っています。
そのため、1冊を読んだだけでも非常に得るものの多い本を容易に選ぶことができます。
内容が濃いため、読むのに時間がかかりますが、岩波文庫の本を100冊読むと、大学の学部卒業程度の知識が身に付くといいます。
大学生の方はもちろん、大学を卒業された方も知識の吸収・確認として、岩波文庫の書籍を読んでみると良いでしょう。
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・分野別に色分けされている
岩波文庫は扱う内容により、背表紙が色分けされています。
したがって、本で扱われている内容そのものを知らなくても、自分の興味のある分野の本を簡単に選ぶことができます。
分野ごとに次のような分け方ができます。
まず、黄色・緑色は日本の文学が中心となっています。
黄色は江戸時代までの日本の古典文学で、緑は現代日本文学となっています。
赤は外国の文学で、東洋文学、ギリシア・ラテン文学、イギリス文学、アメリカ文学、ドイツ文学、フランス文学、ロシア文学、南米、ヨーロッパ文学など、多くの国の文学を取り扱っています。
青では主に思想・哲学の分野を取り扱っており、日本思想、東洋思想、仏教、歴史、地理、音楽、美術、哲学、教育、宗教、自然科学などの幅広い学術的な内容を取り扱っています。
白は、政治経済が中心で、法律、政治、経済、社会といった分野が対象となっています。
岩波文庫はこのように色分けされており、本を見れば一目でどの分野について書かれた本であるかが分かります。
<岩波文庫の魅力>
岩波文庫にはどのような魅力があるのでしょうか。
コンパクトな文庫本だけれど内容が濃く、そう簡単に読めるものではないので、あまり手を出さない方もいらっしゃるでしょう。
でも、一度岩波文庫の魅力に触れることができたら、「読書に岩波は欠かせない」と思うようになるでしょう。
ここではクセになる岩波文庫の魅力についてご紹介します。
・良質な古典を集めている
岩波文庫の一番の特徴であり、魅力でもある部分は「世界中の本の中でも、特に良質な古典を集めている」ということです。
色分けの項目でご紹介したように、岩波文庫ではいくつかの分野わけが成されています。
その1つ1つの分野で、古典と呼ばれてきたものがすべて岩波文庫から出版されています。
しかし、岩波文庫は世界で認められている古典を適当に選んでいるのではなく、古典の選び方についても徹底している点が見逃せません。
そもそも古典と呼ばれるものに対し、岩波文庫は、″「古典」は古いがゆえに古典なのではなく、その時代の課題を鋭くえぐり出し、追究し、実際に多くの読者から指示を得て、時代を切り開く力を持っていたがゆえに古典である″という基準を持っています。
このように、古典と呼ばれるものについても、確かな基準が定められているため、いつの時代になっても揺らぎない支持を集める書籍を世に送り出しているのです。
大学生であるならば、自分の学部・専攻を選んで勉強しますよね。大学での勉強と並行して、まずは自分の専門分野の古典を読んでみましょう。
経済学部に籍を置いているのであれば、白の背表紙の岩波文庫を読み漁ってみましょう。
経済学部生であれば、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は必読の書です。
このように、自分の専攻分野の古典を読むことで、その分野がどのように発展してきたのか、自分の専攻分野はどのような学問体系になっているのかといった概略を把握できるようになります。
先ほどご紹介したように、岩波文庫の100冊を読むと学部4年間の知識を得ることができます。
大学の講義では、先生から直接その分野について教わることができますが、実は独学に勝るものはありません。
私が大学生の頃も「独学に勝るものはない」ということを先生がおっしゃっていました。
学部の勉強をきちんと行いたい方は、是非岩波文庫の本を100冊制覇してみましょう。
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・はずれを知らない良書の宝庫
厳選された良書を中心に読書を進めたいのであれば、真っ先に岩波文庫の本を渉猟しましょう。
岩波文庫の本であればすべて良書といっても過言ではないので、「この本ははずれだ」と思うようなことはありません。
何十年も、何百年も読み継がれてきた本が集められているので、価値のある内容の本が揃っています。
大学生は時間があるとはいえ、授業やサークル、恋愛、アルバイトなどで実は忙しいものです。
読書には多くの時間を費やしたいものですが、人によっては時間も限られています。
岩波文庫の本を中心にして本を読み進めて行けば良質な密度の高い読書を楽しむことが可能です。
また、良い古典を読むことで、どのような本が優れた本であるのか、本を見る目が養われます。
読書の初心者であっても、岩波文庫には積極的に挑戦して行きましょう。
・何度も読み返すことのできる本
岩波文庫の本は、何度も読み直したくなるような本ばかりです。また、何度か読み直さなくては確実に理解することができない本も多いものです。
それほど、読者に課題を投げかけ、考えさせるようなテーマについて論じられた本ばかりです。
本は1度読んだだけでは自分の身に付いたとは言えず、何度も読み直してようやくその内容が自分のものとなります。
簡単な本であっても読み直したくなるような本はありますが、岩波文庫のように自力で考えないと内容が自分のものにならないような本は非常に優れた本だといえます。
岩波文庫の本でも、「この本を一通り読んでみたけれども言っていることがよく分からなかった」「この本は素晴らしい」と感じたものがあれば、何度も読み直し、読み解きましょう。
<特に読みやすいおすすめの本>
岩波文庫は、含蓄のあるテーマを扱ったアカデミックな本なので、岩波初心者の方は読むのに時間がかかったり、読みにくいと思ったりすることが多々あるでしょう。
そこで、最初は岩波文庫の中でも、特に読みやすい本から手を付けてみるという方法をおすすめします。
まず、比較的読みやすい分野というものがあります。それは文学の分野です。
日本文学も世界の文学も物語なので、小説好きな方は岩波の文学シリーズに手をつけてみましょう。
文学以外で読みやすい本の中で、私がおすすめする本の1つとしては、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』です。
この本は、小学生から学生、社会人まで、すべての方におすすめできる本です。
主人公は「コペル君」という少年で、彼には仲の良い親戚の「おじさん」がいます。
コペル君は普段自分が気付いたことや学んだこと、友達のことについておじさんに話し、それを受けておじさんは自分の見解や、コペル君に向けた質問を手紙に綴ります。
このように、手紙のやりとりを中心にして話が進んでゆく本なので、語り口もとても易しく、気軽に読むことができます。
それにもかかわらず、「他者と生きてゆくこととは」、「自分の仕事とは一体何か」、「どうしてこの世に生まれたのか」、「世界はどのように構成されているのか」という深い問題について、読者に問うような1冊でもあります。
また、もう1冊、多くの方が抱く疑問について、ヒントを与えてくれる読みやすい本として、ラッセル『幸福論』が挙げられます。
この本はしっかりとした文章で書かれていますが、難しい学術用語や理解しにくい言い回しなどは使われていないので、お楽しみとして気軽に読むことができます。
「幸福」というテーマについては、古今東西問題とされてきたテーマでしょう。書店に行っても、「幸せとは何か」に関する本がたくさん並べられています。
そもそも幸せというものが存在するのかについても考えなくてはなりませんが、幸福というものが存在するという前提のもと、幸福について考えるのであればラッセル『幸福論』を読んでみることをおすすめします。
めまぐるしく移り変わってゆく現代社会において、何を軸にすれば自分の幸福を見失わずに済むのか、仕事とはどのようなものか、についてラッセルの鋭い考察が綴られています。
また、岩波文庫が出版している本にはどのようなものがあるのか知りたいのであれば、『岩波文庫解説目録』を入手することをおすすめします。
『岩波文庫解説目録』は岩波文庫から出されている全ての本について、5行ほどで説明されている冊子です。
この冊子をメニューのように使って、自分の興味のある分野の本を選んでゆくことができます。
解説目録は書店や岩波書店に申し込めば、無料で手に入れることができます。
岩波文庫編集部のホームページから最新版をダウンロードすることも可能です。
【まとめ】
岩波文庫は、年齢問わず誰にとっても大きな価値となる本を提供してくれる文庫です。
過去に読んだ1冊を再び読んでみれば、内容がより一層自分の頭に入り、本の内容を反芻し自分で考える機会が増えます。
時間のあるうちに岩波文庫に親しみ、気に入ったものは何度も繰り返して読んでみましょう。
最初は易しい内容のものから読み進め、その次は自分の興味に沿った本を選んでみてくださいね。
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