本を自分のものにするためにはどのように読書を行なえば良いのでしょう。
本はただ読み流すだけでは、自分のものとなりません。自分から進んで良い読者となる必要があります。
しかし、この″良い読者″とはどのような読者のことを指すのでしょうか。漠然と″良い読者″と言われてもよく分からないものです。
今回は読書をより自分にとって意義のあるものとして行くために″良い読者″について考えてみましょう。
目次
良い読書をするには良い読者になろう!自分の身になる読書とは
様々な場所で読書が勧められますが、「読書」と一口に言っても多くの本がありますし、本の読み方も多様です。
何よりも、本は楽しんで読み、自分の糧を得るためのものではありますが、本を最大限に活用できる良い読者になるということも欠かせません。
自分が良い読者になるには何をすればよいのか、今回はこの点を中心に読書の楽しみ方をご紹介します。
<良い本を読んで「考える読者」になろう>
良い読者について考える前に、読者と本のかかわりについて検討してみましょう。
本というものは読者がいてこそ成り立つものです。1つの本には多くの評価が下されますが、それらの評価も多様なものです。
「良い」という評価があれば、「悪い」という評価もあり、1つの本を一概に良い・悪いと評価することはできません。
しかし、この評価というものが一つの本の価値を作り上げています。
人が「傑作だ」と言った本や、傑作として語られている本が自分にはあまり響かないこともあるでしょう。
その一番大きな理由としては、「自分が今悩んでいる・興味を持っている事柄にヒントを投げかけてくれるような本ではない」ということが挙げられます。
しかし、自分が必要としているものをすぐに解決してくれる本だけが良いものなのでしょうか。
読書で大切なのは「考える機会を作る」ということです。
そのため、一見簡単に答えを与えてくれないような抽象的な本を読んでみることが非常に大きな糧となります。
このような本はどのジャンルにも存在しており、不思議とその分野の古典として受け継がれています。
しかし、なぜその分野の古典として受け継がれてきているのかといえば、読者に「考えさせる」余地を与えてくれる本であるからです。
このように、読者は「考える機会を作る」必要であるし、本は「考えさせる余地を与える」必要があるのです。
このような相互関係を築いてゆくことを意識しながら本を選び、読んで行きましょう。
そしてこの「考える読者」というのが今回扱う″良い読者″につながって行きます。
それでは、良い読者というものについて考えていきましょう。
<良い読者とは>
先ほど「考える読者」という言葉が出てきました。良い読者を一言で表してしまうと「考える読者」となるのですが、具体的にどのようにして「考える」のでしょうか。
ここでは「考える読者」がどのような読者であるのかについてご紹介します。
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・本と対話をする
本を読んでいる時、特に小説を読んでいる時には感情移入してしまうことがあるのではないでしょうか。
作者の描いた作品世界を体験し、本の中で起きている出来事を見聞きすることは読書の醍醐味ですが、「自分が本の世界に染まる」ということと、「本の世界と対話する」ということのどちらの反応をするかということで、その本の内容の重さが全く変わります。
「本の世界に染まる」ということは、本の中身を検証せずに文章をそのまま受け取ることです。
たとえば、歴史書や社会問題について書かれた本の場合は、著者の意見をそのまま信じるということを意味します。
しかし、このジャンルの本を読む時には、ある程度「疑いの目」を持って読むことが大切です。
歴史書や社会問題について取り扱った本はたとえ事実に忠実に書かれているとしても、少なからず著者の主観が入っているものです。
そのため、本を読みながら「この部分はその通りだ。でも、こちらの部分は本当に正しいのだろうか。」というように検証してゆく目が必要です。
また、小説の場合は作品に感情移入するのではなく、自分の心に引っ掛かる場面を見つけ、そこからその場面がなぜ自分の印象に残るのか、その理由を突き詰めていくことが小説を一層重みのあるものにします。
「読者が気まぐれに、自分勝手に作品を解釈するのは、作者の意図を無視することになるのではないか」と思われるかもしれません。
しかし、本の価値は、どれほど読者に自由な想像を許せるかで決まるものでもあります。
フランスの哲学者・思想家のロラン・バルトは、「作者の死」というものを唱えました。
彼の唱える「作者の死」というものは「作品をその著者である作者と結びつけて考えるのではなく、作品を読んで読者が好きなように想像を膨らませてゆく」ということを意味しています。
つまり、読者は作品に隠された作者の意図を考えるのではなく、自分の想像を膨らませて本を自分のものにすることを唱えたのですね。
良い読書というものは作者が作品世界を提供し、読者がその世界を自分のものとして構築してゆくということを意味しているのです。
どのようなジャンルの本であっても、自分の見解を持ちながら、本と対話をするつもりで「検証の目」を持って本を読んでみましょう。
・自分なりのテーマを持って読む
「本と対話をする」の項目でもお話ししましたが、本と読者の立場は対等です。
たとえ偉大な作家や先生の書いた本であっても、読者が自分の意見を持ち一つ一つの文章を吟味・検証してゆく必要があります。
吟味・検証を重ねて行くことで、本の価値は高められ、情報に流されない自分の見解や思慮も深めることができるのです。
しかし、読み手である自分が本と対等な立場に立つためにはどのようにすればよいのでしょうか。
それは、自分なりのテーマを持って読むということです。
人それぞれ、普段日々を送る中で、疑問に感じていることや気になることがあると思います。
たとえば、最も多くの方の疑問の1つとなっているのが「人間関係」や「生き方」です。
どのようにすれば、周りの人と上手く関係を築くことができるのだろう。
自分はこれからどのように生きて行けばよいのだろう。成功とは一体何だろう。
こんな疑問をたくさんの方が抱いています。
このような疑問があれば、是非「私はこんなテーマについて悩み、疑問を持っている」としっかり認識してみてください。
そして、まずは一度そのテーマについて自分なりに考察してみましょう。
そのテーマについて自分なりの考えを持つことで、本と対話する準備を整えることができます。
テーマについて自分の考えを持ってから本を読んでみると、自分の考えと著者の考えの違う部分に気付きます。
「自分はこう思っているけれども、本ではこう書かれている」、このような発見があれば、「それでは自分の考えだけではなくて、本で書かれていることも取り入れてみよう」と視野が広がることもあります。
このようにテーマを持って読み進めて行くことで、思考の連鎖が生まれます。
本は自分の疑問に対し、簡単に答えを与えてくれません。
しかし、あるテーマについて「考える」機会を与えてくれる大切な源であるのです。
答えを出さなくても「考える」という力が、人生を歩む上でエンジンのような役割を果たしてくれます。
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・本に線や書き込みを入れる
本を自分の血肉にできる人は、本を汚す人でもあります。
本に線を引いたり、書き込みを入れたりして本を汚すことは、本と対話をしている証拠です。
また、本に線や書き込みを入れることで、自分自身がどのような疑問を持ち、どのような観点を持って本を読んでいるのか、はっきりと分かるようになります。
「自分の疑問はこれだ」と分かっていても、実はもっと別の場所に疑問を持っていることもあります。
このように自分の中に隠された疑問に気付くことができれば、本から何かを得て、自分の考えを深めるということだけでなく、自分自身がどのような人物であるのかについても客観的に知ることができるのです。
本に引く線や書き込みは、自分自身を発見した印でもあるということなのですね。
さらに、自分の思考の跡で本を汚して行くということは一時的に役立つだけでなく、時間が経つにつれて一層価値のあるものとなります。
感銘を受けた本は、何度も読み返すことが多いでしょう。
何度も読み返している時に、昔引いたり書き込んだりした部分も自分の目に入ってきます。自分の考えは不変的なものではなく、常に変わってゆくものです。
したがって、自分が過去に書き残した書き込みや、引いた線を眺めることで、なぜ昔の自分はこの部分に注目したのか自ずと考えるようになります。
それと同時に、以前書き込みや線で汚した1冊の本を読むということは、3人の人と対話することを意味しています。
3人とは作者と過去の自分、そして今の自分です。
3人で対話し合い、1つのテーマについて幾重にもわたる見方をすることで、1つの物事からも様々な姿を見出すことができます。
なぜ1つの物事を様々な角度から見る必要があるのでしょうか。
それは、私たちが困難にぶつかった時に、ただ「悲しい、つらい、苦しい」と思うことから抜け出すことができるためです。
「今は一見大変なように思えるけれども、別の見方をすれば自分の見解を深める機会にもなる」と落ち着いて考えられるようになります。
したがって、過去に何重にも重ねられた線や書き込みは、どんな境遇に置かれても感情に流されない自分を育ててくれるものとなるのです。
・気に入った文章を書き写し、反芻する
本を読んでいるとお気に入りのフレーズや表現、そして「この部分は自分でも考えてみる必要がある」と思えるような箇所に出会うでしょう。
そんな時には、その部分をメモやノートにとどめておきます。付箋にメモして見えるところに貼っておいても良いでしょう。
なぜこのように、本の一部を書き留めておく必要があるのでしょうか。
たとえ本を読んでいて、含蓄のある良い言葉にであったとしても、自分のもとにとどめることなく読み流してしまうと、本から何かを得たことにはなりません。
何度も何度も本で言われていることを反芻し、本が伝えようとしていることの本質は何なのか、それに対し自分はどう考えるのか突き詰めていくことで、ようやく読書の効果が出てきます。
気に入った文章を書き写し、それを反芻する。これは、その本の内容を自分の一部にするために必要なことなのです。
【まとめ】
今回は、良い読者というテーマについて取り上げてみました。
作品は作者と読者で創り上げるものです。
そのためには、読者側も自分なりの切り口を持って、貪欲に作品世界を覗いてみる必要があります。
また、読者としての視点を失うことなく作品を読み込んでゆくことで、その本の一部が自分のものとなってゆきます。
自分なりのテーマを持って「考える読者」として読書を楽しんでみましょう。
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